西洋建築の旅 ゴシック様式編

古代ギリシャ・ローマから19世紀末のアール・ヌーヴォーまで西洋建築史を辿ります

ブールジュ大聖堂
ブールジュ大聖堂
ランス、ノートルダム大聖堂の“微笑の天使”
ランス、ノートルダム大聖堂
ビリニュス、聖アンナ教会
ビリニュス、聖アンナ教会

ゴシック様式

 11世紀頃、フランスを中心に広がり始めたゴシック。地方に根差したロマネスクとは対照的に、都市部への人口流入に伴って都市を中心に花開いた。
 
 フランス、シャンパーニュ地方最大の都市ランスの大聖堂はゴシック建築の代表例の一つだ。外部だけでも2千体以上もの彫刻で飾られていて、最も有名な「微笑の天使」と呼ばれる像の、優雅な仕草、人間らしい表情に思わずこちらも微笑をうかべてしまう。
 
 ゴシックの発祥は十二世紀。パリ郊外のサン・ドニで、さびれた修道院復興のため、修道院長が大胆な改築を施したのが始まりとされている。多くの人が礼拝に訪れることができるように聖堂の拡張をはかり、内陣の周りに二重の周歩廊と放射状祭室を設けた。後のゴシックの定番となる薔薇窓もあちこちにつけられた。
 
 その後、高い天井を支える交差アーチや、屋根の重みを支えるバットレス(梁)など、建物を大きく高く建てられる技術が生み出され、競って大聖堂を建てる時代に突入する。彫刻などの装飾が施され、天井を支える役目から解放された壁を飾るステンドグラスはより大きくなり、聖書の物語やその土地の歴史などが描かれるようになった。教会はロマネスク建築の時代と比較して大きく、立体的にそして豪華になった。聖堂にステンドグラスから色とりどりの光が差し込み、人々はその眩ゆい輝きに、絶対的な神の力を感じたであろう。
 
 ノルマンディー地方、セーヌ河の河畔に開かれたルーアンの大聖堂にはゴシック後期の特徴であるフランボワイヤン(火炎)装飾が見られる。モネが連作を描いた事でも有名だ。かつてモネがアトリエとして使っていた部屋から見た大聖堂は絵画そのもの。朝方の絵は青みがかった薄いグレー。昼はクリーム色、夕方の光を浴びた大聖堂はほんのりオレンジ色に色づいている。時間によって多彩に装いを変える大聖堂。当時の人はそこまで計算したのだろうか。幾重にも重ねられた飾りアーチや羽のように広がったフライングバットレス、ゆらめく曲線を組み合わせた装飾のおかげか、巨大な石の塊のはずの大聖堂が、まるで華奢で繊細なレース細工のようだ。
 
 ゴシックとは「ゴート風の」という意味。ルネッサンス前の中世の芸術を粗野で野蛮な物とみなすために呼んだことに由来する。しかし、その実はどうだろう。その後の時代がいかに明るく華やかであっても、多くの都市で、数百年も前に建てられたゴシック様式の大聖堂が、今現在も人々の信仰の中心にある。

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ルーアンの大聖堂(フランス)
ルーアンの大聖堂(フランス)
カンタベリー大聖堂の内陣(英国)
カンタベリー大聖堂の内陣(英国)
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