1632年、オランダのデルフトで生まれたヨハネス・フェルメールは、光を用いた空間描写と写実的な筆でバロック絵画を代表する画家として世界的にその作品は崇められています。フェルメールの作品に加え、その生涯や足跡にもスポットライトを当て、画家の真実に迫ります。

ヨハネス・フェルメールとは

ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)は、17世紀オランダ、バロック期の画家として知られており、有名な「真珠の耳飾りの少女」や「牛乳を注ぐ女」、「手紙を書く女」などの作品を残しました。

彼の独自のスタイルと卓越した技術は、現代の芸術愛好家や美術史研究者によって高く評価され、彼を偉大な画家の一人と位置づける要因となっています。

フェルメールの代表作

真珠の耳飾りの少女(Girl with a Pearl Earring)
「真珠の耳飾りの少女」は1656年頃に描かれた、フェルメールの芸術的な才能と独自のスタイルを最も象徴する作品の一つです。フェルメール独特の光の使い方と細密なディテールが、絵画に深みとリアリズムを与えています。女性の表情は静かで内省的であり、観客に対話を呼び起こします。彼女の大きな眼差しは、観客との間に存在する不思議なつながりを感じさせます。作品は一瞬の停止した瞬間を捉えたような印象を与え、その中に物語性とドラマを感じさせます。観客は女性の背後の秘密や彼女の思考について考えさせられますが、具体的な解釈は明確ではありません。

牛乳を注ぐ女(The Milkmaid)
「牛乳を注ぐ女」は1660年頃に描かれた、リアルな描写と静謐な雰囲気が魅力的な、フェルメールの作品の中でも特に高く評価されている作品のひとつです。女性の作業の中には、日常の中にある美と静けさを見出す力が感じられます。観客は女性の内部空間に入り込み、彼女の日常の一瞬を共有することができます。作品は静かな日常の中にある小さな美しさと平凡さに焦点を当てており、観客に一瞬の幸福感を与えます。

手紙を書く女(The Letter-Writer)
「手紙を書く女」は、1665年頃に描かれた、穏やかな雰囲気と繊細な描写が魅力の代表作のひとつです。フェルメールのリアリズムと光の使い方が、絵画に深みと情感を与えています。絵画の暗い背景と窓から差し込む光は、内部と外部の対比を表現しています。女性の活動は内部のプライベートな領域で行われており、外部の世界との接触を制限しています。彼女の優雅なポーズや真剣な表情は、手紙の重要性や彼女の内面的な思考を伝えているのかもしれません。

フェルメールの『真珠の耳飾りの女』(マウリッツハイス美術館)

『真珠の耳飾りの女』

フェルメールの『牛乳を注ぐ女』(アムステルダム国立美術館)

『牛乳を注ぐ女』

フェルメールの『手紙を書く女』(ワシントン・ナショナルギャラリー)

『手紙を書く女』

フェルメールの生涯

フェルメールの自画像と言われている『取り持ち女』の左の男性
一般的に自画像と言われている『取り持ち女』の左の男性

ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)は1632年にオランダのデルフトで生まれました。彼の父親は鍛冶職人であり、母親は製錬業者の娘でした。フェルメールはデルフトで生まれ育ち、終生その地で暮らしました。

1653年、キャサリーナ・ボルネスという女性と結婚し、15人の子をもうけましたが、4人は夭折してしました。それでも大家族であり、画業だけでは養うことができなかったため、彼は家族とともに質素な生活を送りました。それでもフェルメールは画家として活動しましたが、その作品は彼の生前にはあまり知られませんでした。彼は宗教画や歴史画、風俗画を制作しましたが、最も有名なのは室内の日常的な情景を描いた作品です。彼の作品は独特な光と陰影の使い方、微妙な色彩表現、精緻なディテールで知られています。フェルメールは生涯でわずかな作品しか制作せず、その中でも約35点の作品が現存しています。彼の作品は当時はあまり評価されていませんでしたが、19世紀になって再評価され、現代では彼はオランダ絵画史上の偉大な画家の一人とされています。彼の作品は、後世の画家に大きな影響を与えました。

フェルメールは1675年にデルフトにて43歳で亡くなりました。フェルメールの絵画は、その魅力的な表現力と技術的な優れた点から、現代の観客にも高く評価され、現在では世界中の美術館で彼の作品が展示されています。

フェルメールの『レースを編む女』(ルーブル美術館)

『レースを編む女』

フェルメールの『ヴァージナルの前に座る若い女』(ロンドンナショナルギャラリー)

『ヴァージナルの前に座る若い女』

デルフトの街並み

デルフトの街並み

作品の特徴

フェルメールの作品には、多くの魅力があります。彼は「光の魔術師」とよばれるほど光と影の効果を巧みに利用し、静かで内省的な雰囲気が特徴です。

光の表現
フェルメールは光と影を巧みに使い、独特な光の表現を作品に取り入れました。彼の絵画は、繊細な光の効果によって静謐で幻想的な雰囲気を醸し出しています。光の明暗の対比や反射効果を通じて、作品に奥行きと立体感を与えています。

精緻なディテール
フェルメールの作品は細部にわたって緻密に描かれており、リアリズムを追求しています。彼は細かな装飾や繊維の質感、顔の表情など、細部に至るまで注意深く描写しました。これによって、作品は生き生きとした現実感を持ち、観客に深い感動を与えます。

静謐な情景 
フェルメールの作品は、室内の日常的な情景や風俗を描いています。彼は人物や風景を通じて、静謐で内省的な雰囲気を醸し出しています。作品の中には、人物の集中した表情や静かな行為が描かれており、観客に独特の静けさと魅力を伝えます。

調和の取れた色彩
フェルメールの作品の色彩は、調和の取れた組み合わせが特徴です。彼は青、黄、赤などの鮮やかな色を巧みに使用し、豊かな色彩効果を生み出しています。中でも彼の表現する青色は、当時高価だったウルトラマリンという青色顔料が好んで使用されており、その深みのある青の表現は「フェルメール・ブルー」と呼ばれました。色彩の選択と配置によって、作品に深みと魅力が加わります。

フェルメールの『窓辺で手紙を読む女』(アルテ・マイスター絵画館)

『窓辺で手紙を読む女』

フェルメールの『ヴァージナルの前に座る女』(ロンドン・ナショナルギャラリー)

『ヴァージナルの前に座る女』

フェルメールの『地理学者』(シュテーデル美術館)

『地理学者』

フェルメールのエピソード

副業をしていた!?
大家族であったフェルメールは画家であると同時に、父親から引き継いだ宿屋の経営にも営んでいました。当時の画家が副業をするのは珍しくなかったといいます。父の経営する宿屋では有名無名の画家たちが頻繁に出入りしており、そのような環境で生まれ育ち、宿屋での絵画の展示を通じて、画家との交流等を持っていった結果、フェルメールは画家を志したと考えられます。

女性をよく描いた
フェルメールは、当時のヨーロッパ絵画に登場する男女比の平均の約 4 倍、女性を描いた画家だと言われます。その数、13 人の男性に対して女性は 42 人を描いています。しかし、かれは描いた女性にはひとりとして名前を付けていません。そんな彼はある特定の美しい女性を 4 回にわたって描いており、専門家はこの女性こそが妻カタリーナであると論じています。また、そのうち 2 作品では、カタリーナだと思われる女性は妊娠しているように見受けられます。

小さいサイズの絵画
フェルメールの絵画は非常に小さいものが多いです。代表作では、「真珠の耳飾りの少女」が44cm x 39cm。「牛乳を注ぐ女」が46cm x 41cm。「手紙を書く女」が45cm x 40cm。ちなみにすべてののフェルメール作品の面積を合計しても、同時代に活躍した同じオランダの巨匠、レンブラントの「夜警」(3.63 x 4.37 メートル)、立った1作品と同じ大きさにしかなりません。しかも、レンブラントは「夜警」をたった数か月で完成させています。

フェルメール全作品一覧

『取り持ち女』

『取り持ち女』

フェルメールの『小路』(アムステルダム国立美術館)

『小路』

フェルメールの『真珠の首飾りの女』(ベルリン国立美術館)

『真珠の首飾りの女』

作品名 作品所有施設(制作年)
1.ディアナとニンフたち マウリッツハイス美術館(1653-54年頃)
2.マルタとマリア家のキリスト スコットランド国立美術館(1654-56年頃)
3.聖女プラクセデス 国立西洋美術館(寄託)(1655年頃)
4.取り持ち女 アルテ・マイスター絵画館(1656年)
5.眠る女 メトロポリタン美術館(1657年頃)
6.小路 アムステルダム国立美術館(1658-59年頃)
7.窓辺で手紙を読む女 アルテ・マイスター絵画館(1658-59年頃)
8.士官と笑う女 フリック・コレクション(1658-59年頃)
9.牛乳を注ぐ女 アムステルダム国立美術館(1660年頃)
10.紳士とワインを飲む女 ベルリン国立博物館(1658-60年頃)
11.ワイングラスを持つ娘 アントン・ウルリッヒ公爵美術館(1659-60年頃)
12.中断された音楽の稽古 フリック・コレクション(1660-61年頃)
13.デルフトの眺望 マウリッツハイス美術館(1660-61年頃)
14.リュートを調弦する女 メトロポリタン美術館(1662-63年頃)
15.天秤を持つ女 ワシントン・ナショナル・ギャラリー(1662-63年頃)
16.音楽の稽古 バッキンガム宮殿(1662年頃)
17.青衣の女 アムステルダム国立美術館(1662-65年頃)
18.水差しを持つ女 メトロポリタン美術館(1664-65年頃)
19.真珠の首飾りの女 ベルリン国立美術館(1662-65年頃)
20.真珠の耳飾りの少女 マウリッツハイス美術館(1665年)
21.手紙を書く女 ワシントン・ナショナルギャラリー(1665年頃)
22.絵画芸術 美術史美術館(1665-66年頃)
23.合奏 ザベラ・スチュアート・ガードナー美術館(1665-66年頃)
24.赤い帽子の女 ワシントン・ナショナルギャラリー(1665-66年)
25.フルートを持つ女 ワシントン・ナショナルギャラリー(1665-70年頃)
26.婦人と召使い フリック・コレクション(1667-68年頃)
27.少女 メトロポリタン美術館(1668-69年頃)
28.天文学者 ルーブル美術館(1668年)
29.地理学者 シュテーデル美術館(1669年)
30.レースを編む女 ルーブル美術館(1669-70年頃)
31.恋文 アムステルダム国立美術館(1669-70年頃)
32.ヴァージナルの前に座る若い女 ロンドンナショナルギャラリー(1670年頃)
33.ヴァージナルの前に立つ女 ロンドンナショナルギャラリー(1669-71年頃)
34.手紙を書く婦人と召使い アイルランド国立美術館(1670-71年頃)
35.ギターを弾く女 ケンウッド・ハウス(1673-74年頃)
36.信仰の寓意 メトロポリタン美術館(1673-75年頃)
37.ヴァージナルの前に座る女 ロンドン・ナショナルギャラリー(1675年頃)

※㉔「赤い帽子の女」、㉕「フルートを持つ女」の2作品は、真作ではないとも言われており、専門家の間でも真偽の判断がいまだに別れています。

フェルメールの『赤い帽子の女』(ワシントン・ナショナルギャラリー)

『赤い帽子の女』

フェルメールの『フルートを持つ女』(ワシントン・ナショナルギャラリー)

『フルートを持つ女』

フェルメールの『ディアナとニンフたち』(マウリッツハイス美術館)

『ディアナとニンフたち』

フェルメール作品鑑賞にオススメの美術館4選

マウリッツハイス美術館

マウリッツハイス美術館

アムステルダム国立美術館

アムステルダム国立美術館

マウリッツハイス美術館

真珠の耳飾り(マウリッツハイス美術館)

マウリッツハイス美術館(オランダ、デン・ハーグ)
マウリッツハイス美術館は、オランダのデン・ハーグにある、17世紀オランダ黄金時代の芸術作品を中心に展示している世界的に有名な美術館です。建物自体も美術館の一部として非常に美しいものであり、17世紀に建てられた邸宅を改装しています。フェルメールの他にもレンブラントやヤン・ステーンなどのオランダの画家たちの作品も多く展示されています。
所蔵作品:『ディアナとニンフたち』、『デルフトの眺望』、『真珠の耳飾りの少女』

アムステルダム国立美術館(オランダ、アムステルダム)
アムステルダム国立美術館は、オランダの首都アムステルダムにある、オランダの美術と歴史に関連する作品を多く収蔵している美術館です。19世紀に建てられたネオルネッサンス様式の建築が特徴で、館内には展示室やギフトショップ、カフェ、レストランなどがあり、観光客がゆっくりと美術作品を鑑賞することができる環境が整っています。
所蔵作品:『小路』、『牛乳を注ぐ女』、『青衣の女』、『恋文』

アルテ・マイスター絵画館(ドイツ、ドレスデン)
アルテ・マイスター絵画館は、ドイツのドレスデンにある主に中世から18世紀までのヨーロッパの絵画作品を収蔵する美術館です。アルテ・マイスターはドイツ語で「古典的な巨匠たち」を意味します。建物は19世紀の建築家ゲオルク・フリードリヒ・ツァルツマンによって設計され、建築自体も美しいものです。
所蔵作品:『取り持ち女』、『窓辺で手紙を読む女』

フリック・コレクション(アメリカ、ニューヨーク)
フリック・コレクションは、アメリカのニューヨークにある、19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したアメリカの実業家ヘンリー・クレイ・フリック氏が収集した美術品が展示されている美術館です。美術館自体は、元々はフリックの邸宅として建てられました。そのため、建物自体も豪華で美しいものであり、歴史的な建築物自体も見どころの一つです。
所蔵作品:『士官と笑う女』、『中断された音楽の稽古』、『婦人と召使い』

03-3265-1691

営業時間 10:00~17:00(土日祝除く)

関連する特集

関連する写真